『ブックビジネス2.0』と『〈ことば〉の仕事』

7月に実業之日本社という出版社から、ACADEMIC RESOURCE GUIDEの岡本真さんとの共編著というかたちで、『ブックビジネス2.0』という本を刊行した。自分がかかわった市販の単行本としては久しぶりなので、いささか感慨深い。

タイトルをみて、この本のことを「電子書籍についての本」、あるいは「電子書籍時代に出版社はどういうビジネスができるかについての本」だと思った方も多いと思いが、すでにお読みの方はお気づきのとおり、じつはまったくそうではない。

むしろ自分のなかでは、2006年に原書房から出した『〈ことば〉の仕事』という本と、案外ちかいところにあるように感じている。『ブックビジネス2.0』は共編著であり、『〈ことば〉の仕事』はインタビューをベースにしているとはいえ、文責は僕がすべて負っている著書だが、どちらの本も、インターネットの普及によって情報環境が大きく変化した時代に、個人はどういうかたちで(紙であれデジタルであれ)メディアを生み出し、自らの考えや作品を世の中の人々に伝えていこうとするのだろう、という問いがベースにある。

『〈ことば〉の仕事』では2000年代のはじめに、僕と同世代の1960年代前半の方(小熊英二、山形浩生、水越伸、佐々木敦、堀江敏幸、恩田陸、斎藤かぐみ、豊崎由美)を取材した。この本に登場する人たちは、当時だいたい40歳前後。インターネットも使うが、基本的にはアナログメディアで自己形成してきた世代だ(この「世代」の特徴については、こんな文章も書いた)。でも、そういう人たちの仕事ぶりや振る舞いのなかに、ネット時代の考え方とよく似たモチベーションや方法論がたくさん見て取れ、そこを強調した本になっている。

一方、今回の『ブックビジネス2.0』は、もともと岡本さんが主催したARGフォーラムが企画のコアにあり、長尾真国会図書館長を除けば、登場する人たち(岡本真、津田大介、橋本大也、野口祐子、渡辺智暁)は僕よりほぼ一回り若く、2010年現在で30代の人たちであり、すっかり世代交代が起きたことを感じる。わずか4年しかたっていないのに、ものすごく大きな変化が、この二つの本が出る間に起こった。

でも僕のなかでは、二つの本はやはり地続きなのだ。

それはなぜか。それを考えることは、自分にとって〈編集〉とは、〈出版〉とは、そして〈ものを書くこと〉とは何か、を問うのと同じことになる気がする。「海難記外伝」では、このことについて引きつづき考えていこうと思う(これまでの長い長い話に興味がある方は【海難記】Wrecked on the Sea までどうぞ)。

おかげさまでいまのところ、『ブックビジネス2.0』は好調な出足(少なくとも過去に僕がかかわった本ではもっとも)だけど、電子書籍関係の本とは違う切り口でつくったつもりなので、もう少し広い観点で出版やメディアの世界に興味のある方は、ぜひ『〈ことば〉の仕事』のほうも読んでほしい。また、『〈ことば〉の仕事』のほうをすでにお読みだという奇特な方は、『ブックビジネス2.0』も読んでいただけたらと思う。

ぼくもひさしぶりに『〈ことば〉の仕事』を再読し、自分にとって「ことばの仕事」とは何かを、再発見したいと思っているところです。

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